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2018年12月23日日曜日

前章 五話 その罪は覚えがありません! ★ 貴方なんて冗談じゃありません! 婚約破棄から始まる入れ替わり物語




 黒の装束と布で顔を覆う二人組が、私達に向けて剣を構える。
 舞踏会の夜に強盗なんて!
 助けを呼ぼうと、開きかけた口を閉じる。
 今の時間は、レナート王子のいる会場に警備が集中している。泣きそうで人気のない通路を選んだから、周囲に騎士の姿はない。

「まずいです。助けを呼んでも、誰にも届かないです」
「騎士を呼びたいなら魔法は? 僕としては貴重なこの状況を、もう少し見てたいんだけど」

 危険な状況を見ていたいとかやめてほしい。半ば呆れながら、私は自分の考えを口にする。

「魔力検知が出来る範囲に騎士がいなければ、刺激するだけになりませんか?」
「確かにね」
 
 黒ずくめの者達をじっと観察する。剣はこちらに向けているものの、すぐにこちらに飛びかかって来る気配はない。だからと言って、睨み合うままでいても仕方ない。

「ローランド男爵。とりあえず、前が駄目なら後ろに逃げませんか? 後方はなら舞踏会場の方角です。ある程度まで進む事ができれば、魔法に騎士が気づく可能性が上がります」
「謎の黒ずくめと追いかけっこ! 興奮するね!」

 危機感のいまいち薄いグレイの隣で、高いヒールの靴をドレスの中で脱ぐ。こんな事になるのなら、わざわざ履き直す必要なんてなかった。

 グレイが私の手に軽く触れて合図し、私達は一斉に振り返る。すぐに走り出すつもりだったけど、一歩も進むことが出来ずに固まる。
 別の黒ずくめの者が、背後にもう一人現れたからだ。

「挟み撃ちされちゃったよ」

 嬉々として呟くグレイに、非難の眼差しを向ける。
 そんな悠長な事を言っている場合ではない! これってかなり危険な状態だ。

「剣は持ってますか?」

 私の言葉にグレイが、腰に下げた繊細な細工の剣を軽く叩く。

「今日のは切れ味の悪い飾り物。売り込みで持ってきた品だから、抵抗ぐらいはできるけど切る事はできないね」
「腕前は?」
「自分一人なら時間は稼げるかな。君を守る自信はない」

 その言葉が聞ければ十分だ。

「一人なら頑張れるんですね。では、私が助けを呼んできます」

 切れ長の瞳を見開いたグレイから、新たに現れた黒ずくめの者に視線を移す。そして、令嬢らしい怯えた表情を私は作る。

「一体何なのですか? 私達は何もしないから、何処かへ行ってください!」

 予想はしてたけど、答えは帰って来なかった。私はその場にふらふらと、恐怖に耐えかねたという風情で座り込む。

「ディルーカ伯爵令嬢? 腰が抜けちゃったのかい?」

 頭上で慌てふためくグレイの声が聞こえるけど、返事はせずにふんわりとしたドレスに体を埋める。ドレスの中で脱いだヒールを足で押しやって、差し入れた手でそれぞれ両手に掴む。

 今でこそ立派な?令嬢だけど、私は田舎育ちの狩猟経験者だ。そこらの男の人よりも、身の軽さには自信がある。

 男の私に向ける気配に緩みを見つけて、おもむろに立ち上がるとスカートをたくし上げて駆けだす。
 まずは靴の片方を顔に向かって思い切り投げる。

「うぉっ、くそっ!!」

 顔に勢いよく飛んできた靴を手で振り払った男に向けて、間髪入れずにもう一つ投げつける。

「もう一つ差し上げますね!」

 続けて投げた靴は、苛立たし気に剣で一閃される。帰りに履く靴がなくなった! 小さく舌打ちしてながら十分近づいた距離を確認して、私は重心を下げて足から男の体の横に滑り込む。

 すれ違う瞬間、男が大きく目を見開くのが見えた。
 令嬢は優雅でお淑やかにだ。私がこんなことするとは考えてもみなかっただろう。

 完全に擦り抜けてから、身をよじって跳ね起きと、私は中庭の通路を会場に続く扉へ向かって駆けだす。グレイの事は置いてきてしまったけど、振り返って確認する余裕はない。自分の身なら守れるという言葉を信じよう。

 扉まであと数歩という所で、地面がぐにゃりと歪んだ。慌てて足を止めると、土が大きく盛り上がってアーチを塞ぐ。土属性の魔法だ。別の棟の扉へと顔を向けたけど、そちらも土の山に塞がれてしまう。

「ディルーカ伯爵令嬢、大丈夫?」

 後ろからグレイの声が聞こえて振り返ると、二人組の一人と剣を切り結ぶ姿が見えた。

「大丈夫です!」

 そうは叫んだけれど、大丈夫とは言い難い。さっき横をすり抜けた黒ずくめの者が、もの凄く殺気立った雰囲気で近づいてくる。

「貴方たちは何なんですか?!」

 返ってくる言葉はやはりない。何だかおかしい。違和感が私の胸に広がる。

「目的を言ってください!」

 もう一度、男に向かって問いかける。
 この黒ずくめの者は、さっき『くそっ!!』って一言漏らした。少ししてやられた程度で殺気立っているし、気が短く感情的なのだと思う。だから、上手く煽れば口を滑らすかもしれない。

 いつでも軽快に動けるように両手でドレスを思いっきりたくし上げると、黒ずくめの者が顔を背けた。
 意外な動作に驚いて、何の所為かと自分を見下ろす。
 白に青色リボンのふわふわ可愛いドレスの下に、色気も可愛さもない焦げ茶色の着古したズロースが見えた。付き侍女には、履くのをやめろって確かに止められた。でも、下着なんて見せる事ないし、これが温かくて履き心地が良いからと選んだのだ。それを今、本気で後悔する。 

「こんな事になるとは思わなかったんだもの! すけべ! 見ないでよ!!」

 色気も何もないが、一応はあられもない姿といえる私から目を背けた男に叫ぶ。

「すけべですって? 貴方が自分で見せているんでしょ!」

 私の言葉に黒ずくめの『男』が顔をこちらに向けて言い返す。思いの外、言葉遣いがきれいだった。強盗だとは思えない確信が広がる。

「だから、見ないでよ! それから、か弱い令嬢に乱暴が許されると思っているの?」
「見たくて見ているわけじゃない! そんな色気のないズロース!! あと、君の動きは全然か弱くない!」
「……すけべ! おたんこなす! 何が目的ですか?」
「……」

 男が黙り込む。

「何が目的ですか? 乱暴者! すけべ!」
「っ……」
「何が目的ですか? すけべ! おこりんぼう! すけべーーー!」
 
 顔を隠した黒い布から覗く茶色い瞳を、男が耐えかねたようにぎゅっとつむる。

「……大人しくしてろ! 危害を加えるつもりはない」

 危害を加えるつもりはない? ここまで対峙しておいて、その言葉はどういう意味か。
 
「じゃあ、何故? すけべ……」

 ちょっと言い過ぎな気がして、最後の悪口の音量は少し下げた。でも、ちょっと遅かったようだ。男がカッと目を見開いて、地面を滑るように私の足を薙ぎ払いに来る。

「きゃあ、っと、っと!」

 大きく跳ねて後ろへと飛び退いて避ける。男は体をそのまま回転させて、流れるような動きでお腹に向かって続けて蹴りを入れてくる。
 これも横に大きく避けた……つもりだった。たくし上げたドレスの端が、男の足先に引っかかって蹴りの勢いに掴まる。振り投げられるような形になって、私は生垣の方へと飛ばされる。

「きゃあああ!――ったい」

 運よく生垣の中に突っ込む形になって、怪我はせずにすんだけど全身は葉っぱだらけだ。

「リーリア、大丈夫かい?」

 目の前にグレイが現れて、私に手を差し伸べて引き起こす。

「うん、有難う。ローランド男爵」
「グレイ。グレイでいい」

 そう言って私を抱き寄せたグレイが中庭を後ずさる。

「グレイは大丈夫なの?」
「あぁ、なんとかね。でも、剣が弾き飛ばされて、丸腰になってしまったよ」

 確かに、グレイの手にはもう剣はない。左からはすけべな黒ずくめの者が、右手からはグレイが対峙した二人組が徐々に距離を詰めてくる。

「グレイ。大人しくしていれば、危害を加えるつもりはないって言われたんです」
「へぇー。それって強盗の常套句じゃない?」

 その問いかけに首を振る。それはもう絶対にない。

「強盗ならば目立たずに逃げ去りたい筈です。ここまで執拗に対峙するなんて絶対にない。何か他の目的が――」
「じゃあ、怨恨かな。結構心当たりはあるよ。僕は新鋭の芸術家で名が売れているから、男にも女にもそこそこに恨みを買っている。リーリアだって、さっきまではレナート王子の婚約者だった」

 私の言葉を途切って、グレイが怨恨の可能性を挙げる。
 確かにレナート王子の婚約者だった間は、色々な令嬢たちから嫉妬されていた。でも、今はもう違う。
 忘れていた痛みを思い出して、ぎゅっと唇を噛み締める。

「その一番大きな理由は、もう無くなりました。ですから、グレイの所為かもしれませんね」
「傷ものになったら、貰ってあげるね。君は面白いから!」
 
 こんな状態なのに冗談を言って笑うグレイにため息をついてから、もうそんなに距離のない黒ずくめの者達を睨みつける。

 グレイも丸腰で退路は塞がれている。できるのは、時間を稼いで見回りの騎士が来るのを待つ事ぐらいだ。
 
「魔法は使えますか?」

 グレイに尋ねると、周辺を確認してから答える

「『水』が使える。だけど、魔力量はそこまで多くないよ。三人まとめて倒せとかは無理だからね。リーリアは使えるのかな?」
「『火』です。使えると言えば使える。でも、使えないと言えば使えない。『魔法』はあまり得意じゃないです。なので威嚇程度しか出来ないと思ってください」

 『魔法』はどうしても苦手だった。力の加減やコントロールに、馴染むことが出来ない。

「僕が水の壁を作って、リーリアが彼らの足元を狙う」

 グレイが人差し指を前に出して小さく回す。くるりくるりと回る度に、噴水の水が吸い寄せられるように集まってきて、あっという間に私たちを守るように水の壁ができる。
 私も自分の魔力を指先に集中させる。ゆっくりと魔力を練る様に指を回して、近くの火を魔力と馴染ませて呼び寄せる。
 ランプの一つが音を立てて割れると、私の魔力と混ざった火が指先に集まる。握りこぶしぐらいになる度に、指を払って黒ずくめの男たちに向かって放つ。

 何度かは思う通りに上手くいった。黒ずくめの男たちも足を止めて、その場が膠着する気配を見せた。
 でも、突然複数のランプが割れて、光を失った周囲が急に暗くなる。次の瞬間、私の手元の火が突然人の頭を超える大きさになってしまう。

「リーリア! 強い! 火を集めるの勢いが強すぎる!! 離せ!」

 集めていた魔力を停止すると、大きな火の塊が一人の黒ずくめの男にまっすぐと向かっていく。
 威嚇だけのつもりだったのに、これでは怪我をさせてしまう!

「避けて!!」

 叫んだ私の視線の先で、黒ずくめの者が手首を一閃させて強い風が吹く。
 私の『魔法』が軌道を変えて、黒ずくめの者から逸れた。
 
「とんだじゃじゃ馬だな! 少し躾けてやろうか?」

 吐き捨てるように言う声は、さっき私と対峙した黒ずくめの者だ。彼とは何だか嫌な縁があるみたいだ。
 件の黒ずくめの『男』が私に向けて魔力を練り始めた次の瞬間、パンと弾ける音と共に一本の木に火が付いた。
 激しい音を立てて、一本の木が魔力を含んだ強い炎に飲み込まれていく。

「くそっ! 流石にこれは人が集まってしまう!!」

 よく喋る黒ずくめの『男』が大地を蹴ると、アーチを塞いでいた土の塊がバラバラになって崩れ落ちる。

「引くぞ!!」

 別の黒ずくめが初めて声をあげて叫ぶと、あっという間に彼らは身を翻して北棟の方へと駆けて行った。

 今日は一体どれだけ運が悪いのか。
 小さな不運から始まって、ジュリアに因縁をつけられて、異国の王族のクリスにとんでもない頼みごとをされて、レナート……と色々あって、最後の最後に黒ずくめの者達に襲われて……。

 その場に思わずへたり込むと、東棟の方から物々しい声が遠くに聞こえ始める。
 きっと木が燃える煙に気づいた騎士が動き出してくれたのだろう。

「グレイ。どうやら助かったみたいですね」
「そうだね。創作意欲が刺激されちゃったよ。悪いけど、後は君に任せて僕は失礼させてもらう! 君の棄てられ話をネタにするのは、別の機会! さよなら、リーリア」

 いうが早いか、グレイが駆けだす。その背に向かって叫ぶ。

「二度と来ないで下さい!」

 グレイの背が消えると、私は燃え盛る木に近づく。
 まだ誰も中庭に居ないのを確認して、扇に魔力を込めて文字を書く。古い古い遠い昔の文字を幾つか記し、それを最後に丸で囲む。それから、手の平にも同じものを少し変えて書くと、ゆっくりと魔力を流し込む。
 扇に書いた文字が魔力で淡く光る。こぽこぽと小さな音がして水が溢れ始めると、扇を燃える木に向かって投げこむ。

「火を消して」

 呟いて一段と魔力を強く流すと、扇から木を飲み込む程の水が溢れて、炎が瞬く間に全て消えた。

 『魔法』は苦手。でも、『魔術』なら私は得意だ。
 地図にもない忘れ去られた小国だったアルトゥリアには、何処の国とも繋がりがなくて『魔法』の知識が長く入ってこなかった。だから、代わりに古の『魔術』が発展して、今も私達に残っている。
 『魔法』みたいに自由に動かす事は出来ないけれど、『魔術』は何かを生み出す事が出来る。誰かと協力して使う事もできるし、これはこれでとても便利な力だ。
 だけど、セラフィンで『魔術』は禁忌とされているから、人前で使う事はきつく止められている。

「扇、ダメになっちゃった。 気に入ってたのに……」

 溜息を吐いて肩を竦めると、東の棟のアーチから騎士服に身を包んだ人たちが出てくるのが見えた。

 この木の事はどうやって説明しよう……。
 強盗みたいな人の話をして、ここで争った事も話さなくてはいけない。あぁ、また令嬢らしくない話が一つ増えてしまう。グレイに残ってもらえばよかったな。

 厳しい顔をした騎士が、真っ直ぐ向かってくるのを見ながら叱られる事を覚悟する。

「リーリア・ディルーカ伯爵令嬢ですね」
「はい」

 騎士長の徽章をつけた人が私の名を呼び、私は簡易の礼を取って返事をする。
 瞬間、騎士たちが私を取り囲んで剣を抜く。

 どういう事? 何故、私が騎士に剣を向けられているの?

「あの木が燃えた事は、きちんと説明します。色々――」
「リーリア・ディルーカ伯爵令嬢。貴方にソフィア様襲撃の嫌疑がかかっています」

 はぁあああ?!って、叫び声を必死で飲み込む。
 ソフィア様って、レナート王子の新しい婚約者の名前だ。ソフィア様が襲撃? それって誰かに襲われたって事?

「あの。さっきまで――!」
「動くな!!! 動いたら切るぞ!」

 黒ずくめの者達の事を話さなければと、踏み出した私の首筋に刃が当てられる。
 声には、脅しじゃない本気の響きがあって、冷たく鋭利な感触に足がすくむ。
 小さく深呼吸をして、心を落ち着けてもう一度ゆっくりと言うべき言葉を繋ぐ。

「私は、襲撃については何も知りません。先程まで、この中庭で不審な人たちに襲われていたんです。木が焦げているのも、庭が荒れているのもその所為です。グレイ・ローランド男爵も一緒でしたので、確認してください」

 騎士長が小さく首を振る。

「その言葉の真偽は、後ほど調べます。ですが、今は受け容れる事はできません。我々は貴方を捕らえる理由を持ってここに立っています。貴方が『魔女』の眷属『虚鬼』を使って、ソフィア様を襲うのを見たと申し出た使用人がいます」

 『虚鬼』それは年に数回、現れる恐ろしい者の呼び名だ。
 普通に生活していた人が、いきなり変貌して周囲の人を襲い始める。何故おこるのか、本当の事は誰も分からない。ただ『虚鬼』への変貌は『魔女』の所為だと言われていて、分からない事だから誰もがとても怖がっている。

「嘘……。そんな事はあり得ない」

 うろたえる私を真剣な眼差しで見つめて、騎士長が再び口を開く。

「ディルーカ伯爵令嬢、貴方の言葉をこの場で否定するつもりはありません。しかし、貴方にはレナート王子の件でソフィア様を襲う動機があります。裏付ける証言もある以上、反論なさってもここで私達の行動が変わる事はありません」

 視線を動かして周囲をみれば、取り囲む騎士の視線には敵意と嫌悪と恐怖があった。
 今日は本当に運が悪い。でも、これっきりにして欲しい。これ以上の悪い事なんて想像できない。
 二度三度深呼吸をして心を決める。

「わかりました。今は捕らえられる事に同意いたします。ですが、清廉な騎士の方々の前で、もう一度言わせてください。私はソフィア様の襲撃は知りません。舞踏会場を出た後は、この中庭におりました。その際に不審な人物を目撃し交戦しております。グレイ・ローランド男爵が全てを証言できる筈です」

 私の言葉に騎士長がはっきりと頷いてくれる。

「ご協力感謝します。意識を失う魔法を使いますが、よろしいですか?」

 その言葉に目を閉じると、騎士長が額に手を伸ばす気配がした。
 額に魔力で文字が書かれると、私は真っ暗な闇に包まれる様に意識を失った。




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前章 四話 婚約破棄が酷すぎる! ★ 貴方なんて冗談じゃありません! 婚約破棄から始まる入れ替わり物語



 
 雑然としていた舞踏会の会場から、話し声が消える。
 優雅で美しい音楽が響く中、私の婚約者である第一皇子レナート・セラフィンが大階段をゆっくりと降りてきた。

 変わらない日々が、続くなんて限らない。

 冬の月を思い出させる白金の髪が揺れて、レナート王子の紫の瞳が緩やかな弧を描く。その眼差しを受けて、見たことのない令嬢が穏やかに微笑み返す。
 
 誰? 一体どういう事なの?
 はっきり言って何が何だか分からない! 

 唖然とする私の目の前でレナート王子が、隣を歩く令嬢の細い腰を親し気に抱く。
 場内がはっきりとしたどよめきに包まれて、いくつもの視線が私の反応を計りながら口々に囁きを交わすす。

「レナート様の隣に立つのは、誰だ?」
「まるで恋人の様な振る舞いじゃないか!」
「愛らしい令嬢だが何処の家の娘だ?記憶にないぞ」
「婚約者のリーリア・ディルーカ……様は、どうした?」

 居ても立っても居られない気持ちで、人込みを縫うように大階段への近くへと向かう。
 婚約者とは言っても発表の済んでいない私が、王家だけが立ち入れる大階段を上る事は出来ない。ただその登り口にたって、踊り場で足を止めたレナート王子をまっすぐに見つめる。
 けれど、レナート王子が私と視線を合わせる事はなかった。

 レナート王子がよく鍛えた腕を上げて、楽団が音楽を止める。静まり返えった広間を見渡すと、いつもと変わらない優しい顔でゆっくりと口を開く。

「今日、一人の女性を紹介したい。東の領にいる聖女の噂は、もう皆も聞き及んでいるだろう。私の隣に立つのは、聖女ソフィア」

 意外な人物に皆が息を飲む音が響く。次の瞬間、大きな歓声に変わる。

 『聖女』ソフィア。その存在の噂は私も聞き及んでいる。
 事故で怪我をした人を、一瞬で回復させた。
 枯れた井戸に、美しい水を蘇らせた。
 朽ちた花を、再び美しく咲かせてみせた。
 彼女が半年の間に起こした奇跡の数々は、生まれる度に国中を瞬く間に駆け抜けて誰もが知っている。だけど、彼女の姿を知る者は殆どいなかった。
 彼女に会おうと多くの人が修道院に押しかけたけど、世間と交わらない修道女の決まりを重んじて人前に姿を現す事がなかったからだ。

 レナート王子に促されて、聖女ソフィアが一歩前に進み出る。ドレスの端を摘まんで一礼すると、豊かな金色の髪がそっと肩から滑り、あちこちで感嘆の溜息が落ちる。

「はじめまして、皆さま。ソフィアと申します」

 薄紅の唇から愛らしい声で挨拶する。止まない歓声にソフィアが困ったように笑って、零れそうな瞳でレナート王子を見上げる。
 そんな彼女を守る様に抱き寄せて、レナート王子が静まるようにと大きく手を払う。

「もう一つ、報告がある。私とソフィアの婚約が決まった。皆、祝福を!」

 一段と大きな歓声が上がり、多くの拍手が二人に向けられる。

「おめでとうございます!」
「次代の国王と聖女の婚約に祝福を!」
「レナート王子! 万歳!」
「聖女様! 万歳!」

 未来の国王と聖女に対する祝福の嵐の中で、私はドレスを握りしめる。

 これは一体何の冗談なのだろう?
 声の洪水の中にいるのに、全ての音が遠く。目の前の景色は、ガラス越しの別の世界のように見える。
 何もかもが現実感のない夢の中の出来事みたいだ。 

 呆然と何度も瞳を瞬く私と、レナート王子の紫色の瞳が今夜初めて重なる。
 レナート王子が笑顔を消して私の方へ向き直るとと、只ならぬ雰囲気に歓声と拍手が止み始める。

「リーリア……。いや、リーリア・ディルーカ伯爵令嬢」

 レナート王子が、大勢の人たちの前で私の名を呼ぶ。ファーストネームを余所余所しい爵号に言い換えた事に、好奇の視線が一段と増す。
 
 嫌な予感がする。この先を聞いてはいけない。そんな凄く嫌な予感が胸の中から湧き上がって、鼓動がどんどん早くなる。

「私達を祝福してくれないのかな?」

 何を私に祝福しろと言うのだろう?
 私を婚約者として扱った人が、隣に新しい婚約者を連れている事を?

 返事をしない私に向かって、苛立たし気にレナート王子が口を開く。 

「君とは、随分と色々な噂が流れてしまった。だが、正式に決まった事は何一つなかった。違うかな?」

 確かに、派閥同士のいがみ合いがあって私とレナート王子は婚約発表には至らなかった。
 でも、確かに婚約の申し出をされて受け容れたのだから、婚約の事実はあった筈だ。

「どういう事ですか? 噂とか、正式に決まった事はないとか」

 開場が水を打ったように静まり返る。レナート王子が面倒くさそうな顔になって吐き捨てる。

「物分かりが悪いな。私と君には、何の関係も成立していない。意味が分かるね?」

 ようするに婚約発表をしていない私との関係は、無かった事だという事なのか。
 言葉の意味は分かる。でも、何がなんだか分からない!
 だって、今日この瞬間まで私は自分はレナート王子の婚約者だと思ってたのだ。いきなり公衆の面前で新しい婚約者を紹介されて、なかった事って納得できるか!
 
「私との婚約は破棄されると言う事ですか? ならば、きちんとこんな形ではなくご説明頂きたかったです」

 レナート王子があからさまに眉根を寄せる。こんな冷たく嫌な表情をする人だっただろうか。
 目の前の現実が急に実感されて、胸が締め付けられて苦しくなる。

「いけないよ、リーリア・ディルーカ伯爵令嬢。君と私には、公式に名前のつく関係は何一つない。私と何かを約束した記憶があるなら、それは記憶違いだと思った方が良い」

 私とレナート王子が婚約しているという認識していた貴族たちが、事実を確認する囁きを交わし始める。

「リーリア様はレナート王子と婚約していなかったのか?」
「そうだろう。王子が明言しているんだから」
「それはない。あれはどう見ても婚約の体をとっていただろう」
「待て? 結局、どういう事だ? 婚約破棄とは違うのか?」
「どうでもいいだろ?」
「要はディルーカ伯爵令嬢は棄てられて、聖女様と婚約するって事だ」

 事実だけを確認しようとする男性達の隣で、若い令嬢や夫人達が眉を顰める。

「聖女様を選んで、リーリア様をお捨てになるの?」
「王子の申し出は、少し酷いように思えます」
「殿方の契約ではないのですから、睦まじくしていて書類がないからなど……」
「一方的だわ。これは流石にディルーカ伯爵令嬢がお可哀想……」

 書類はない。婚約発表もない。でも、私を同伴して特別な相手と仄めかした日々を、こうして知る人もいる。形がなくても、私はレナート王子の婚約者だった。

「なら、私の知る日々は何ですか? 私たちの関係を貴方は何と呼びますか?」
「何も。そもそも私と君は釣り合うような間柄ではないだろう?」

 レナート王子の問いかけに、小さな含み笑いがあちこちから漏れて、『田舎者』『旧国』『こざる』と揶揄する声が上がる。
 周囲を見渡すとたくさんの顔が見えた。
 私を心配する顔、怒った顔。それを上回る嘲る顔、楽し気な顔、満足げな顔。期待を込めた顔。
 大声で野次が飛ぶ。

「聖女様との婚約の前では、リーリアとの過去は穢れでしかない」
「旧国の娘が元婚約者など、記録でさえ忌々しい!」

「レナート様は、次期国王としてとして正しい判断をされた!」
「レナート様、聖女様! ご婚約おめでとうございます!」

 『教会派』の貴族が色めき立って、『旧国派』が非難の眼差しを向ける。
 私の処遇を巡っての口論が、次第にそれぞれの不満になって加速していく。

 もう止めてと叫びそうになった時、品行方正と評されるレナート王子が苛立たし気に床を蹴る。
 唇を噛んで俯いた私に、レナート王子の冷たい声が追い打ちをかける。

「リーリア。君との噂は、もはや私にとって悪評でしかない。だが、噂は噂で真実ではないから、忘れればいいだけだ。これは、私の温情だ。悪意ある噂がこれ以上流されないなら、私は君も噂の出所も咎めない」

 レナート王子の私を見る眼差しは、とても冷たい。
 茶番のようなやり取りを続けても、元に戻る事はないだろう。

 私はどうしたらいいのだろうか?
 泣けばいいのか? 怒ればいいのか? 笑えばいいのか? 取り乱せばいいのか?
 震える指先を、拳を作って抑える。この状況で私が感情を表にすれば、悪意を持つ人を楽しませるだけだ。
 矜持を奮わせて、胸を張って僅かに顎を上げる。
 全ての想いに蓋をして、ゆっくりとレナート王子に向かって私は一礼する。

「お心を煩わせる発言をした事を謝罪いたします。ご婚約……おめでとうございます」

 顔を上げて、精一杯の笑顔を浮かべる。
 これが私の最後の婚約者としての仕事だ。『聖女』との門出を祝福で送り出す。
 声は振るえてないだろうか。ちゃんと微笑みは作れているだろうか。

 視界が滲みそうになって、逃げるように踵を返す。
 一刻も早くこの場を後にして、今は一人になりたい。

 舞踏会の会場を出ると、真っすぐに馬車寄せを目指して走る。マナーなんてもうどうでもいい。

 私の事を好きだと言った言葉は何だったのか?
 側で支えて欲しいと願ったのは何だったのか?

 誰もいない中庭に面した通路で跪く。目の前が涙でぐちゃぐちゃだ。これじゃあ、一歩ももあるけない。
 ドレスの裾で顔をごしごし拭く。拭いても吹いても、涙が溢れてくる。

 私とレナート王子が出会ったのは六年前。十一歳の時だ。
 一緒に過ごした時間で、私は何もかもを知っているつもりだった。
 優しいのに、少し腹黒い。控えめなのに、根性がある。泣き虫のくせに、頑張り屋。
 ずっと私の事が好きだと思ってた。初恋だったとはにかんで教えてくれたから。私が誰を好きでも構わないと言って、私じゃなきゃ駄目だといったのに。

「レナート王子の大嘘つき!! 裏切者!! 馬鹿! 馬鹿! 馬鹿!」
 
 叫ぶと同時に放り投げた靴が、通路の大理石の上で跳ねる音が響く。
 その音に、後ろからやって来る誰かの足音が重なった。

 誰?

 ぐしゃぐしゃの顔をもう一度拭いて、扇を開いて顔を隠してから振り向く。
 知らない男の人だ。目じりの下がった癖のある眼差しは、金の混じった紫の色が印象的で、一度見たら絶対に忘れる事はないだろう。

 本当に今日は何処までもついていない。こんな日のこんな状態を人に晒す事になるなんて。

 男が私を見つめて楽しそうに笑う。感じが悪い!

「すごいな! お城で靴を放り投げる令嬢なんて初めて見た!」
「ごめんあそばせ。でも、ほっといてください」

 さっさと行ってほしいのに、男は私の側に来るとじろじろと観察し始める。

「なにか?」
「いや……。盛大に棄てられた令嬢がどんな風なのか見ときたくて」
「お断りです! さっさと行ってください」

 思わず大きな声をだしてしまう。だけど、男は涼しい顔で楽しそうに私を見降ろし続ける。
 ものすごい失礼な男だ。ここで感傷的になっていては、良い見世物になってしまう。慌てて立ち上がる。そう言えば靴を放り投げてしまった所為で裸足だった。

「ねぇ、やっぱり靴は取りに行くわけ?」

 男が私に尋ねる。投げなきゃよかった。

「行きます。舞踏会の帰りに私の靴が転がってたら、物笑いの種ですから」
「あー。確かに、あれだね。物語で靴を投げるってあるけど、あれも後のことまで考えないと喜劇だよね。君も盛大に捨てられて嘆くとこまでは悲劇だけどさ、今の靴を取りにいくのはちょっと面白い!」

 男を無視して靴を拾う。男には腹が立つけど、可笑しなやり取りの所為で涙は一旦引いた。そのまま立ち去ろうとする私の腕を男が掴んで止める。

「ちょっと待って!」
「何ですか?」

 振り払って尋ねると、男が揉み手をして答える。

「今、どんな気分?」
「はぁあ? あなた一体何なんですか?」

 驚いた様に目を瞬いて、男がきちんと礼を取る。

「ご挨拶が遅れました。グレイ・ローランドです」
「ローランド? ローランド男爵?」
 
 男が私の言葉に頷く。
 グレイ・ローランド男爵は最近人気の芸術家だ。絵を書けば、ジュエリーのデザインもする。詩を書くこともあれば、物語を書くこともある。
 教会派が特に贔屓にしていて、今夜の舞踏会でも彼の新作の絵が飾られていた筈だ。

 私も彼の書いた物語を持っていて、かなり気に入っていた。書いたのがこの人だと思うと、一気に興ざめするけど……。

「ええ。ご存知頂けたなら幸いです! 貴方のこの状況がとっても気に入ったので、是非参考にさせてください!」

 満面の笑みで男が私に告げる。くるりと踵を返して、大股で歩き出す。
 はっきり言って冗談じゃない! この状況が気に入った? 
 私の人生で一、二を争う……いいえ、最高に最悪の一日を参考にしようなんてふざけるにも程がある。

「待って! 待って!」
 
 グレイが私の良く手を阻むように前に立つ。困ったような様子で若草色の髪を掻き上げてから、両手を合わせて懇願する。

「頼むよ! こんな珍しい状況は滅多にない! もう、来週には教会に戯曲の台本を納めなくてはいけないんだ。君が協力してくれなかったら、僕は荷物をまとめて故郷に帰らなくてはいけなくなるかもしれないよ。可哀想だと思わないかい? 同情したくなるよね? さぁ、だから色々話して――」

 よく回る口だなと呆れながら、男の側を無言で擦り抜ける。
 その瞬間、剣を携えた黒ずくめの男たちが飛び出してきた。




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前章 三話 女の諍いは怖いんです! ★ 貴方なんて冗談じゃありません! 婚約破棄から始まる入れ替わり物語





 床に倒れこんだ儚げな令嬢の姿に、周囲が騒めく。

 はちみつ色のドレスから覗く華奢な足首を押さえるのは、ジュリア・グレゴーリ公爵令嬢。この国に二つしかない公爵家の末娘で、私の事を昔から大っ嫌いと公言し目の敵にしている人物だ。

「いたぁ……い」

 すごく嫌な予感しかないけど、か細い声を上げたジュリアを無視する訳にはいかない。

「ジュリア様、何かあったのですか? 大丈夫ですか?」
 
 手を差し出すと、ジュリアが潤んだ眼差しで私を見上げる。
 稲穂色の垂れ目がちな大きな瞳、震える唇は柔らかな赤。癖のある縦ロールは耳を垂らした子ウサギを思わせる。幼くて愛らしい様子は私よりも二つ年上だとは思えない。
 小動物みたいな愛らしさに胸がきゅんとした瞬間、差し出した手がぴしゃりと払いのけられる。

「リーリア様、あんまりですわ! 知らんぷりなんて、酷いのですぅ……」

 座り込んだままジュリアが私を糾弾する。やっぱりそう来たかと、眉間に皺が寄りそうになるのを堪える。
 この構図だとジュリアを倒したのは私で、私は知らない振りをしている筋書きなのだろう。
 早速、興味深々の眼差しを向けていた人たちが、筋書きに乗せられて事実を勝手に補完し始める。

「ディルーカ伯爵令嬢とグレゴーリ公爵令嬢がぶつかったみたいだな」
「リーリア嬢が、ジュリア嬢にぶつかったってさ」
「違いますわ。グレゴーリ公爵令嬢はリーリア伯爵令嬢に倒されたようです!」

 早くも私が悪者に断定されていて、小さくため息をつくと耳元でラニエル子爵が囁く。

「こんな時に何だが。花瓶の件は、君個人への悪意の可能性はどうだろう?」

 私への悪意……。目の前のジュリアをじっと見つめる。
 ジュリア以外でも私個人に悪意を向ける人は少なくない。特にレナート王子との婚約に関しては、派閥を問わず多くの令嬢から嫉妬の視線を向けられている。

「ないとはいえません。よく考えてみます」

 それだけ答えて、私は一度くるりと髪を指で遊ばせて周囲を見る。
 さぁ、どうしたものだろう? 今、周囲にいる者は古くからのセラフィン貴族の『教会派』が多い。ジュリアは筋金入りの『教会派』だから、これは私の分が大分悪い。

 引くか、突っぱねるか。
 引けば早く幕引きは早いけど、後々まで尾ひれ背ひれのついた悪評を立つだろう。
 突っぱねれば、長々と泥仕合を繰り広げる事になる。悪評もやっぱり立つ。
 覚悟を決めて、私は口を開く。

「お言葉ですが、私は一歩も動いていませんでした。どうして、私からジュリア様に触れる事が出来るのでしょう?」
 
 まっすぐジュリアを見つめて、堂々と潔白を主張する。
 どちらも悪評が立つならば、泥仕合でもこっちの方がいい。結果はどうあれ、やっていないという主張は、必ず人の心に僅かに残る。

「リーリア様、それは本当ですの?」

 噛みつかれるかと構えていのに、予想に反してジュリアが不安そうな表情になる。周囲からもジュリアの様子に、勘違いという言葉が漏れ始める。

 ジュリアだからと、私は悪い想像をしていた。でも、勘違いだったのかもしれない。少し悪い事をしたと思いながら、ジュリアに向かって微笑みかける。

「はい。私はジュリア様にぶつかっていません」
「でも、……わたしくは、こうして倒れている。リーリア様は、絶対にそう断言できるのですか? 何か――」

 不安げにジュリアが周囲を見回すと、私の背後でラニエル子爵が「あぁ」と小さく呟く。

「口出しは野暮だと存じておりますが、お許しいただけますか? グレゴーリ公爵令嬢」

 ラニエル子爵が一歩進み出ると、ジュリアが嬉しそうな顔で頷く。

「勿論ですわぁ。何なりとおっしゃって下さいませ」

 ジュリアの同意を得ると、ラニエル子爵が任せておけというように私に片目をつぶる。

「リーリアは私の隣におりました。ずっと側で、人探しを手伝いってくれていたんです。真っ直ぐ前を見て、後ろに下がるなどしておりませんでした」

 小さな事件を終わらせる言葉に、周囲から落胆と安堵がない交ぜの吐息が落ちた瞬間、ジュリアが悲鳴のような声をあげる。

「まぁ! 隣でなのに断言ですの? そんな事って可笑しいですわ」

 ジュリアの言葉に不穏な空気が再び漂い始め、人々の視線が私からラニエル子爵へと移る。
 してやられた事を理解してラニエル子爵が黙り込むと、ジュリアが嫣然と言葉をつづける。

「わたしく、リーリア様の隣で遠くをご覧になるラニエル子爵を偶々見ておりましたのよ。まっすぐ前を向いて、どなたかお探しの様でしたわ。どうして、隣の方が絶対に下がらなかったと断言できまして? 不思議ですわぁ。隣に目なんてついておりませんのにねぇえ?」

 令嬢の揉め事に男性が口を出すのは嫌われる。それが、一方に味方する内容で主張が曖昧なら尚の事だ。周囲からはラニエル子爵に向けた非難と疑いの言葉がささやかれ始める。

「どういう事? ラニエル子爵は嘘を吐いたのか?」
「ディルーカ伯爵令嬢を庇ったのだろう?」 
「男が令嬢の揉め事に口を挟むのは、如何なものかね!」
「これは、いよいよリーリア様が怪しいのではないか?」

 大きくジュリアに傾きだした観衆に、両手を胸の前で組んだジュリアが縋るような眼差しを向ける。

「誰か……本当の事を見てらした方はおりませんか? 私がリーリア様に押されたと、証言して下さる方はいらっしゃいませんか?」

 ジュリアが口にする真実なんてない。だから、誰も進み出るものはいない。
 ドレスの裾をぎゅっと握りしめて、ジュリアがうるんだ眼差して周囲を再び見る。

「リーリア様には曖昧とはいえ味方がいらっしゃる。わたくしにはいないなんて、寂しくて心が潰れてしまいそうですわ」

 悲し気に息をはいて、私たちをジュリアが怯えたように見る。
 憎らしいけどジュリアは上手い。言葉、声音、視線、持てるもの全てを使った可憐なジュリアに、観衆が筋書へと引きずり込まれる。

「ジュリア様、可哀そう……」
「見た者がなくとも、私はグレゴーリ公爵令嬢を信じるぞ」
「誰か、ラニエル子爵達に反論してやれないのか」

 倒れこんだ孤立無援の可憐なジュリアと、真実を隠そうとするラニエル子爵と疑わしい私。そんな構図が観衆に出来上がる。

 やっぱり社交界なんて嫌いだ。流されやすくて、意地悪で、本当に面倒!
 舌打ちを堪えて、私は対抗する道を探す。先ずは、庇われいる状態を無くさないといけない。
 出来るだけ冷たい表情でラニエル子爵を見て、厳しい叱責の声を上げる。

「ラニエル子爵、口出しは無用です。これは私とジュリア様の問題なんです。お心遣いのつもりでしょうが、曖昧な言葉など迷惑です!」

 そっとラニエル子爵の袖を引いて、すぐさま小さな声で謝罪する。

「私の為に、ごめんなさい。後は任せて下さい」

 一見、酷いように見えるけど、この方法なら強い叱責という形で私とラニエル子爵が切り離せる。更に、少し決まり悪くても善意の介入として撤退させてあげる事が出来る。
 私の意図を理解して、ラニエル子爵が申し訳なさそうに呟く。

「すまないね。嵌められて事態を悪くしたのに、退場の切っ掛けまで作らせてしまった」
「大丈夫です」

 小さく頷くと、ラニエル子爵がジュリアに向かって非礼を詫びる一礼をする。

「……無粋な真似を致しました。申し訳ありません」

 下がろうとしたラニエル子爵に向かって、ジュリアが『旧国派』に対する嫌味を口にする。

「とても残念ですわ。政の中心にいる方が、仲間意識で物事をお測りになるなんて」

 これまでとは違うざわめきが周囲に起こる。
 古いセラフィン貴族には『旧国派』に強い敵意を向ける者は少なくない。
 私が生まれるより少し前までは、旧国は奪われるだけの存在だった。それが今や、活躍の場を広げて古いセラフィン貴族の立場を脅かしつつあるからだ。

 不満を抱えていた者が、ジュリアの言葉に火を付けられて反応し始める。

「やはり、旧国のの者達は仲間意識で物事を動かすのか」
「どうりで最近新しいものばかりが取り立てられていく訳だ」
「口利きで『旧国派』に地位が奪われるとは嘆かわしいな!」

 令嬢同士の諍いから『旧国派』への敵意に問題がすり替わると、罵る言葉はどんどんと加速して、悪意の対象も広がっていく。

「国王陛下は、旧国に甘いのでは? 重用し過ぎだ」
「旧国が政に関わるのに、納得がいかなかぬ!」
「前々から旧国の者が、私は嫌いだった。彼らを招き入れるのは誤りだ!」
「そうだ! この件を奏上して、処罰を望もう!」

 ラニエル子爵が下がるのを止めて、厳しい視線と言葉から私を庇う。その袖を私はもう一度引く。
 
「変わって下さい。この流れは、駄目です。令嬢同士の諍いに『派閥』を巻き込むのは間違ってる」
「だが……」

 私の眼差しに気圧されるように、ラニエル子爵が言葉を止める。
 正直、ものすごく腹が立っていた。
 ジュリアが私の事を嫌っているのは知っている。でも、私を叩く為にここまでするのは、絶対に間違っている。
 大きな争いに火をつけてどうする? 戻れない場所まで派閥の敵意が煽られれば、この国の存在自体が揺らぐ可能性だってある。
 この場の感情で、国の根幹を揺るがすなんて絶対に許されない。

「悪意なんて慣れてます。流れを変えるなら、ラニエル子息より私の方が適任です」

 強引にラニエル子爵の前に出て、私は好き勝手に悪意をばら撒く人達と向き合う。
 挑むように周囲を見渡すと、何人かが口を噤んで私に視線が集まりはじめる。

 まずは、この場を令嬢同士の諍いの場に引き戻す。私の喧嘩を『旧国派』『教会派』に発展なんてさせない。
 しっかりと背筋を伸ばして、出来るだけ厳しい声を出す。

「官吏の決定権は国王陛下にあります。国庫の管理は、私情を挟まず厳正でなくてはならない。ラニエル子爵は私において、確かにとてもお優しい。それは多くの方が、以前より知るところです。でも、公においては違う。職務に適う振る舞いが出来る人材。そう判断して、国王陛下が国庫を預ける一人に選んだ。そうではないのですか?」

 私に向けて、詭弁と囁く声がした。庇い合いと罵るような声もした。
 誰かは分からないけれど、声がした方を見据えて再び口を開く。

「私はセラフィン王国の民の一人として、国王陛下の聡明なご判断を信じております。ここは、私とジュリア様の令嬢同士の些細な諍いの場。政の議論の場ではありません。政の異議を問いたいならば、陛下の御前で堂々となさって下さい」

 息を飲む音が一つになって、思いのほか大きな音になった。ここで政の愚痴を吐き出す者に、国王陛下の前で異を唱えられる気概のあるものなんていない。
 言い足りない言葉に口を開けては閉じてを繰り返し、言葉を飲み込んだ幾人かが敵意の眼差しを私に向ける。涼しい顔を装って、じっと待つ。

 引き絞るような緊張した沈黙の後に、何人かが腹立たし気に床を蹴るのが見えた。まだ悪意は燻っているけれど、不満の言葉は封じる事に成功したみたいだ。
 でも、もっと空気を変えなくてはいけない。そう決意して、ジュリアに向かって私は軽い礼をする。

「……とはいえ、殿方にご助力頂いた事はお詫びするべきですね。ジュリア様をご不安にさせたと理解しております。ごめんなさい、ジュリア様」
 
 私の謝罪の言葉に勝ったと誰かが喜び出すより先に、宣戦布告の言葉を叩きつける。

「その上で、改めて申し上げます。私は貴方に対して、こちらからは何もしていません! ジュリア様は何か大きな勘違いをなさっているのではありませんか?!」

 ジュリアの稲穂色の瞳を真っすぐに見つめる。受けるジュリアも私を真っ直ぐ見る。

「リーリア様。では、どうして公爵令嬢のわたくしが、床に膝をつかなくてはならないのかしらぁ?」
 
 苛立たしげ問いかけたジュリアの言葉を、扇を開いて緩やかに煽いでみせながら一蹴する。
 
「私は知りません。ご自身が一番お分かりなのでは?」

 ずっとジュリアの手の内で完璧に踊らされてきたけど、もう好きにはさせない。

「あら。わたしくは、ずっと真相を申しておりますわ」
「私も真相を言っています。どうして、すれ違うのでしょう?」
「わたしは存じ上げませんわ」
「ご存知ないのですか? 私はどちらかが思い違いをしているか。嘘をついていると思っていますが?」

 ジュリアが息を飲むのが見えた。令嬢は優雅にお淑やかにが大事にされるから、ここまではっきり言われると思っていなかったのだろう。
 
「わたくしは、嘘などもうしません!」
「私も嘘など言いません!」
「嘘ですわ!」
「そちらが嘘でしょう?」

 惚れ惚れする様な泥仕合に、内心で苦笑いする。
 滅多に見る事のない一歩も引かない令嬢同士の言い合い。私の期待通りに、周囲の人たちも先ほどまでの事を忘れて飲まれている。
 泥仕合の筋書きも成功したし、そろそろ切り上げたい。でも……この先の着地点が私にも見えていない!
 こんな事に巻き込まれるなんて、やっぱり今日の私は運が悪い。

「わたくしは、引くつもりはありませんわよ」
「私もです。でも、何時まで続けるつもりですか?」

 私の問いかけに、苦々し気にジュリアが黙り込む。
 先程のジュリアの呼び掛けには、誰も進み出なかった。誰も見ていない自信があったから、ジュリアは立証できないラニエル子爵の発言を呼び込んだのだろう。
 私たちの争いを公平に止められる人が誰もいない事は、ジュリアが一番分かっている筈だ。

 短い沈黙の後に、ジュリアがすっと目を細めて口を開く。その瞬間、右手側の人垣から一人の人物が進み出てきた。

 目深にかぶった真っ白な羽が飾られた青の帽子。それは北の大陸の礼装の一つで、セラフィン王国で見る機会は少ない。

 何者なのだろう? ちらりとジュリアを見れば、同じ様に私を計る眼差しとぶつかる。どうやらジュリアにとっても、乱入者は知らない人物みたいだ。

 異国の人物が一度首を傾げてから、優雅な仕草で帽子を取る。
 その姿に周囲からうっとりとしたような溜め息がおちる。








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2018年12月18日火曜日

前章 二話 舞踏会には不運がいっぱい! ★ 貴方なんて冗談じゃありません! 婚約破棄から始まる入れ替わり物語





 楽団の奏でる優雅なワルツ。シャンデリアの下で柔らかく輝く銀のカトラリー。華やかな礼装に身を包む紳士と煌びやかに翻る令嬢たちのドレス。
 年二度の王家主催の舞踏会は、息を飲むほど美しい。

「ごきげよう、ディルーカ伯爵令嬢」

 礼装の紳士の挨拶に、私はドレスの端を摘まんで軽く膝を落とし一礼をする。

「ごきげんよう。今夜は特に美しい舞踏会ですわね。素敵な一夜を……」

 月並みな口上を笑顔で述べると、そのまま真っ直ぐに壁際へと移動する。
 舞踏会は綺麗だけれど、人が多いのは苦手だ。溢れる熱気に酔いそうになる。
 そっとため息を吐いて、冷たい空気を求めるように窓へと身を寄せる。夜を背負った窓に自分の姿が映ると、一度くるりと髪を指で遊ばせてじっと見つめる。 

 パールが散らされた腰まで届くまっすぐな紺青の髪。同じ色の瞳と化粧を薄く施した白い肌。青いリボンの花があしらわれた白いドレスの腰は、頑張ってコルセットで整えて結構細い。

 私、リーリア・ディルーカが王都に来てもう七年が経つ。田舎の領から出て来たばかりの頃は、髪が短くて日にやけていて『子ザル』とか『田舎者』なんて随分と陰口を叩かれた。
 こうして正装した姿を見れば、その頃の面影はもうない。髪は伸びたし、日焼けもしてない。努力したからマナーだって間違えない。今のリーリア・ディルーカなら、伯爵令嬢として十分胸を張れると私は思う。

 鏡からくるりと向き直ると、少しお行儀が悪いけど背中を壁に預ける。
 
 見た目が変わっても、中身は簡単には変われない。社交界は今もあまり好きじゃない。
 コルセットは窮屈だし、誰かの噂話や悪口は苦手だし、堅苦しいマナーは疲れる。

 特に今日はなんだか運が悪い。俯いて不運の数を指折り数えはじめる。

 今夜の私は入城から運が悪かった。
 まず招待者名簿から、名前が抜け落ちていた。上流貴族のご令嬢だから帰れとは言われなかったけど、散々待たされて入城は一番最後になった。

 すっかり遅れて人気のない通路を走って……じゃなくて! 粛々と早歩きで移動していたら、途中の通路は水瓶でもひっくり返したように水浸しだった。幸い誰もいなかったから、ドレスの裾をたくし上げ飛び越えた。

 漸くホールに入るって時には、吹き抜けの上からケーキと果実水入りのグラスが降ってきた。横に飛び退って避けたのを見てた使用人が私の振る舞いに唖然としてた。悪い評判が経ったらどうしてくれるのか。

 この壁際に辿り着く前も、足元に飛び出した誰かの足を踏む大失敗。飛び越えるつもりだったのだけど、少しずれて『ぎゅーーーーーっ』っといった。痛がる人も名乗り出る人もいなかったのは幸運……。

 四つまで指を折ったところで、突然周囲が騒めく。顔をあげると、何人かが驚いた表情で私の方を指さす。どうしたのかと、壁から身を離すと悲鳴のような声が上がった。 

「危ない! リーリア様、」 
「ディルーカ伯爵令嬢! 上を!」
「逃げろ!」
 
 慌てて見上げると、身の丈より大きな飾柱の上から花瓶が落ちてくる。

「やっぱり! 今日はなんて運が悪い!」

 カーテンの端を掴んで、身を庇うように素早く前へ引く。
 ぐっと重い手応えを感じると、カーテン越しに花瓶が鼻先すれすれに浮き上がった。
 小さな鼻が更に小さくなったら、どうしてくれるのか! 
 むぅっと頬を膨らませて、軽くなったカーテンから手を離す。落ちてきた花瓶は反動で水が滲んだカーテンに包まれ、するすると滑り落ちて絨毯の上に音もなく転がった。

 花瓶無事。カーテンは水浸し。私無事。二勝一敗? 
 咄嗟にしては健闘したと握りこぶしつくると、まばらな拍手が周囲から起きた。
 令嬢にとって大事なのは、お淑やかで優雅である事だ。賞賛の顔で拍手をしてくれている人もいるけど、令嬢らしくない行動に困惑した顔の人もいる。

 さて、どうしたらいい? 
 昔の事とはいえ、私は『子ザル』とか『田舎者』と呼ばれた変わり者令嬢だ。また、リーリア・ディルーカが令嬢らしからぬ事をしたと、悪い評判は瞬く間に広がる恐れがある。

 とりあえず、戸惑っている人たちに向けてドレスの端を摘まんで膝を軽く折る。細心の注意を払って、優雅に綺麗にたおやかに。それから、弱々しい声音で弁解する。

「こんな恐ろしい事もあるのですね。災難でしたが、カーテンに守られて助かりました。驚きに胸が苦しくて、一歩も動ける気がしません。誰か非力な私の代わりに、片付けの者を呼んでいただけますか?」

 握りこぶしを作っておいて今更だけど、か弱い令嬢を装って上目遣いで様子を伺う。

「あぁ、そうだ災難だね」
「えぇ、カーテンがあって、運が良かったのですわね」
「リーリア様、怖かったでしょう?」

 困惑顔の人々がなんとなく雰囲気に飲まれる。

「片づけを呼んでまりましょうか?」

 身を翻した者が出ると、それを合図にしたように視線が離れ始めた。
 一応、これで取り繕えたのかな? 残った眼差しに『お終い』と扇を広げて微笑んで、私もそそくさとここから逃げ出す。

 人の少ない場所を選んで歩きながら、花瓶の乗っていた飾柱を振り返る。

 今のも、不運だろうか? 
 私は田舎育ちで、小さい頃は狩りに参加していたような変わり者だから避けることが出来た。でも、普通の物静かな令嬢ならば大怪我をしていた可能性が高い。
 でも、そんな事はあり得るだろうか?
 今夜は王家主催の舞踏会で、不注意で怪我人が出るなど許されないだろう。
 誰かが、花瓶をわざと落とした……? 

「リーリア! リーリア・ディルーカ伯爵令嬢!」

 名前を呼ぶ声に慌てて振り向くと、すぐ後ろにラニエル子爵が立っていた。

「ごきげんよう、ラニエル子爵」

 ラニエル子爵はお父様と同じ年と言う事もあって仲が良い。屋敷にも頻繁に訪れるので、私にとっては気安い人物だ。

「ごきげんよう、リーリア。災難だったみたいだね?」

 その言葉に思わず頬が引き攣る。先程の件が、早速どこかで話題にされているらしい。

「何処で聞いたんですか?」
「君を探していたら、友人が教えてくれたんだ。凄かったらしいね! 剣を受け流すかのように、カーテンで花瓶を受け流したんだって? 教えてくれたのは優秀な騎士なんだが、男なら隊に誘いたかったってよ」

 お茶やダンスならともかく、騎士に誘いたいなんて令嬢には自慢にならない。むしろ、それは醜聞だ。
 
「最悪……。最近は凄く大人しくしていたのに……」
「リーリアが大人しかったって? まぁ、街で悪戯っ子の首根っこを押さえたとか、落ちてきた小鳥を木に登って巣に戻したとか……。小さい頃に比べれば、ちょっとお転婆ぐらいには減ったと思うが……」

 苦笑いを浮かべるラニエル子爵の言葉に、思わず盛大に溜め息を漏らす。

「それ、結構前の事ですよ。しかも、私がやらなきゃ誰がやるって状態です」

 確かに止むに止まれずやってしまった事は稀にあった。でも、それ以外は十分に令嬢らしく過ごしてたつもりだ。なのに、何度かの突発的出来事が独り歩きして、未だにお転婆が評価なのではかなり落ち込む。

 思いっきり髪を振って、沈みかけた気分を追い払う。終わった事にくよくよしても仕方がない。それよりも今は確認しておいた方が良い事がある。

「ラニエル子爵。騎士の方は、花瓶の落下の事で何かいってませんでしたか?」

 声を掛けられる前に考えていた事を告げると、ラニエル子爵が表情を引き締める。

「誰かが花瓶を落としたか……。身の丈よりも高い場所だし、簡単な事でないだろう?」
「はい。それは『魔法』とか?」

 『魔法』ならば『魔力』を使って、自分の属性となじむものを自由に動かすことが出来る。風の属性なら風を、火の属性なら火を、土の属性なら土を、そして水の属性なら水を動かせる。 

「『魔法』ねぇ……。それは流石にないだろう。舞踏会で魔法を使用すれば、反逆罪で厳罰になる。花瓶を動かす程度の魔法は感知されにくいとはいえ、警備の騎士もいる中で危険を侵すとは思えない」
「てすよね……。やはり、今日は不運がかさなっているだけなのかも」

 ラニエル子爵が小さく首を傾げる。それから苦虫を噛み潰したような顔で煌びやかな舞踏会の会場を見渡す。

「リーリア。そこの果実酒はブルーニア地方のものだ。全てのテーブルの燭台は、新鋭細工師のロルマン作。あちらの絵画は、贔屓のローランド男爵の新作。今夜は、うちに回ってくる請求が怖いぐらいの気合の入り方だ」

 くるりと髪を指で遊ばせて私が頷くと、予算を管理する一人であるラニエル子爵が更に言葉を続ける。

「ここまでお金を掛けているのは、国王様が不在でレナート王子が初主催だからだ。そうすると、リーリアの考えも的外れとは思えない。ここまでやって、花瓶が落ちる過ちをすると思うかい?」
「思えません。でも、危険を冒してまで誰がという話に……」

 心当たりを一つ見つけたけど、これはかなり言いづらい。口ごもる私にの答えを、ラニエル子爵が見透かす。

「レナート王子を担ぐ『教会派』の面子に泥を塗りたい、私達『旧国派』っていう考えもある」

 元々、小さな国だったセラフィン王国は、百五十年ほど昔に周辺国をまとめ上げて今の大国の姿になった。この時にまとめ上げられた国々を『旧国』と呼び、『旧国』出身貴族の派閥を『旧国派』と呼ぶ。
 対して、古くからのセラフィン貴族は教会の役職者が多く『教会派』と呼ばれていてた。
 『教会派』は、第一王子レナートを、『旧国派』は第二王子をそれぞれ担いで水面下で長く争っていた経緯がある。ちなみに、ラニエル子爵は南の大国リーヴァ領の出身で、私は田舎の小国アルトゥリア領の出身。私達は互いに旧国の出身である。

「ごめんなさい! 流石にそれはないですよね」

 慌てて頭を下げて平謝りをすると、ラニエル子爵が人の悪い笑みを浮かべる。

「どうかな『教会派』の邪魔はしたい……これは本音だよ」
「え!!」

 思わず固まった私を見て、ラニエル子爵が噴き出す。

「冗談! ……安心していいよ。我々は国王陛下に才を買われてここにいる。決断に背くまねはしないさ。まぁ、万が一に先走る阿呆がいたとしても、流石にリーリアを巻き込まないよ。次代の王選びの争いに敗れた今、君は旧国出身者の希望だものね。『未来の王妃』リーリア様!」
「――ち、ちがいます!!!」

 私は大慌てで否定する。首も手も両方振っても全力否定だ。

「おや? どの部分が違うのかね? 君、レナート王子と婚約してるよね? 間違いだったかな~?」

 揶揄うような追及から、私は扇を開いて少し赤くなった顔を隠す。

「ち、違いません。でも、口されるのは……ちょっと……」

 ラニエル子爵の言葉に間違いはない。
 二年前に、私はレナート王子から婚約を申し込まれて受け入れている。派閥の反対などもあって、正式にお披露目こそはしていないが、立場としては婚約者で間違いない。

「恥かしがってるのかな? 初々しなぁ。レナート王子とは、幼馴染とも言える間柄だったよね? どんな風に好き合うようになったのかい?」

 その言葉に思わず目を閉じる。
 私とレナート王子、そしてデュリオ王子。私達は、十一歳からの数年を友達のように過ごした。
 思い出せば、全てが懐かしい。強引で自由なデュリオ王子がいつも突拍子もない事を思いついて、私が巻き込まれて、優しいレナート王子が助けてくれた。
 良い事ばかりではなかったけれど、一日一日が宝物みたいな時間として心に今も残っている。
 初めて恋をしたのも、恋をされたのも、全部この頃。
 恋とか愛とか友情とか、繊細で難解な気持ちは、問われても言葉にするのは難しい。
 
「秘密です」
 
 すげなく答えると、いい年した大人なのにラニエル子爵が唇を尖らせる。

「何時になったら、馴れ初めを教えてくれるのかな? 皆、そろそろ聞きたがっているよ」

 放っておくとずっとこの話題になりそうなので、私は扇をぴしゃりと閉じて話題を変える。

「ところで! 私を探していたのですよね。何かあったのですか?」 
「ああ、揶揄っていたら忘れてた! 君に紹介しなくてはいけない人がいたんだよ。途中まで一緒にいたんだが……」

 そう言って、ラニエル子爵が周囲を見回す。だけど見つからなかったようで、今度はが背伸びをしてワルツを踊る人たちの向うを探し始めた。
 誰を探しているのか知らないが、私も一緒に背伸びをして眺める。

 トントンと私の背中が叩かれる。何かと思って振り返るより先に、可愛い声で背後から悲鳴があがる。

「きゃあああああ!」

 床に誰かが倒れる音が続いて、私が振り返った時には小柄な少女が床に蹲っていた。
 特徴的な栗色の縦ロールに、私は新しい不運の訪れを確信する。




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前章 一話 プロローグ 私が貴方なんて冗談じゃない! ★ 貴方なんて冗談じゃありません! 婚約破棄から始まる入れ替わり物語




 冷たいなって思った瞬間、水の流れていく音がすぐ近くに聞こえ始めた。

 川、近い? 服、……張り付いて気持ち悪い……。私、どうしたんだっけ?
 指先に力を入れると砂利を掴む音がした。途端、体中に痛覚が一斉に戻ってくる。

 手が痛い。足が痛い。背中が痛い。特に脇腹、凄く痛い!

「――っう」

 カーテンを開かたかのように、急に視界が戻って体を起こす。

 暗い……。夜だ……。

 冷えた手で痛むわき腹を抑えると、生暖かい血の感触がする。

 血……? どうして? これは怪我?
 酷く頭がぼんやりとする。下半身を攫おうとする川の音を聞きながら記憶を辿る。

 懐かしい場所。裏切りの言葉。風を割く弓の音。腕をとられて……。
 そう……だった。私は、彼と一緒に川に落ちた。それで、流されてここに辿り着いた。

 少しずつ戻ってきた記憶の一つに、私ははっと息を飲む。
 彼は? 彼こそ酷い怪我をしていた筈だ。
 
 慌てて彼を探して周囲を見渡す。西へと傾きだした月。遠くの木々。後ろを流れる川。そして、倒れた私。んっん……私?!  

「はぁああああ?!」

 あり得ない光景に私は叫ぶ。なんだか驚き過ぎて、低い雄たけびになってしまった。でも、そんな事は今はどうでもいい。

 目の前の光景を私は凝視する。水に濡れた長い紺青の髪。所々が破れた罪人が着る黒いドレス。瞼を閉じた苦し気に歪んだ顔。間違いなく目の前にいるのは私、リーリア・ディルーカだ。
 ここは河原で、鏡なんてない。私がまるで一人の別人のように、私のすぐ側に倒れている。
 川辺で浅い水の中に座り込んだまま、私は口を開く。

「な、なんで? なんで、私が私の隣――」

 呟いた声を途中でとめる。耳慣れない声だった。体の中から確かに聞こえる私の声なのに、私の声とは思えない程低い。
 恐る恐る血の付いた手で喉に触れる。私が自分と理解するものよりずっと太い。ごくりと唾をのむと、無い筈の喉仏が上下した。

「あ、あれ? あれれ? 私、変? なんで……それに、私がそこに倒れてて……。そう倒れた私!」

 もう頭が混乱しすぎて、何から対処していいか分からない。
 自分に起きた事を放り出して、倒れた私に手を伸ばす。ところが、今度は伸ばした手の大きさと、纏う服の白い袖を見て、更に深い混乱に陥る。

 結果、右手は倒れている私を揺さぶり、左手は動いている私自身の顔をまさぐるおかしな事態になってしまった。

「私……! そっちの私、大丈夫! こっちの私、どうなってるの?!」 

 倒れている私が、揺すられて短いうめき声をあげる。

「うぅ……」
「あぁ、そっちの私! しっかりして!」

 言葉と同時に左手の下で、ちょっと違和感のある私の唇が動く。

「ぎゃああああああ!! こっちの私、やっぱり変?!」

 忙しなく二つの自分の間で右往左往を繰り返す。
 ダメだ……。私、落ち着け。二度三度深呼吸を繰り返して、私はぎゅっと目を閉じる。
 ごめん私! 大きな二つの手で自分の頬を思いっきり叩くと、目の覚めるような音と共に両頬に痛みが走る。凄く痛いけど、これで喝は入った。

 まずは、倒れている私に顔を近づける。
 眉を寄せて不快そうではあるけど、規則正しい呼吸が聞こえた。揺すっても起きないけれど、僅かに反応はある。意識を失っているよりも、深く眠っているのだろう。

 次に怪我がないか、体に触れる。頭には出血はない。見える範囲の腕や足も、かすり傷はあるけど大丈夫そうだ。体……と濡れた胸元に手を伸ばして、目に映った大きな手を慌てて引っ込める。
 これ以上、この大きな手で触れる事には抵抗があった。

 安堵の息を漏らして、川の方へ向き直ると水面を覗き込む。
 今度は、こっちの私の番だ。私に一体、何が起きたのだろう?
 でも、月明かりでは暗くて、流れる川には歪んだ影しか映らない。

 仕方ないので、べっとりと血がついた脇腹の傷を川の水で洗い流す。真っ直ぐな切り傷からは、まだ少し血が流れているけれど致命傷という訳ではなさそうだ。
 命に関わらないと分かると、少しだけ気持ちに余裕が出てくる。

 そのまま、視界の端に映っていた胸に触れる。筋肉のついた逞しい胸板には、多少はあった女性らしい膨らみはない。
 銀の縁取りの上着の飾り紐を軽く引く。この服は、見た事がある。
 それから自由に動く手を見つめる。大きいのに節の少ない長くて白い指。この手も私は、よく知ってる。

 私が自由にするこの体が、私のものではない確信がある。誰れかという予感も、私にはもうはある。

「でも、こんな事あるわけがない。きっと悪い夢……」

 それでも、容易に受け容れる事ができず、自分に夢だと言い聞かせて目を閉じる。何も見なければ、これ以上真実を突きつけられる事はない。

 小さな砂利の音に、束の間の逃亡が破られる。倒れた私が起きたのではと期待して慌てて目を開けたけど、体をよじっただけでまだ目は覚ましていなかった。

 そっちの私は誰なのだろう? やっぱり貴方なのだろうか? 起きたら貴方はどうするの? 
 長い足を引き寄せて膝を抱えると、私は倒れた自分を見下ろす。

「うんんっ……」
 
 倒れた私が、寒そうに一層体を小さくする。暖かくなったとはいえ、濡れた体で過ごす夜は寒い。このままだと、体の熱が奪われて危険かもしれない。
 それに、……。落ちた前の状況を思い出して舌打ちする。

 あの時、私と彼を襲った者は、今何をしているのだろうか?
 これが悪い夢だとしても、私は決断しなくては駄目なのかもしれない。

 腰に下がった剣を鞘から抜くと、刀身が月の光を反射して柔らかく光る。まっすぐに横に掲げて、そこに映る姿を、目を逸らさずに見つめる。

 白い刃に浮かぶ、秀麗な顔。冬の月みたいな銀に近い薄い金の髪。冷たく深い知性的な紫の瞳。自分自信に今の姿をはっきりと突き付けて、漸く私は自分がどうなったのかを受け容れる。

 今の私は本当の私である伯爵令嬢リーリア・ディルーカではなく、この国の第一王子レナート・セラフィン。

 ……冗談じゃない! こんなの嘘! やっぱり……受け入れたくない!
 
「よりにもよって、なんでレナート王子なの?!」
 
 薄々は予感してたけど、これは最悪だ。
 レナート・セラフィンは、この国の王太子で私の婚約者だった人だ。

「私を棄てた人。私を陥れた人。今一番、側に居たくない人じゃない!」

 私は唇を噛み締めて、罪人が着る黒いドレスに身を包んで倒れた私を見つめる。

『だった』の言葉通り、レナート王子はもう私の婚約者ではない。私達の関係が変わってしまったのは数日前。婚約破棄はのやり方は余りに酷かった。
 舞踏会で最も注目が集まる瞬間、皆の前で言いたい放題に言われ、隣には新しい婚約者である『聖女』をちゃっかり連れてだ。
 混乱、屈辱、消沈、怒り、悲しみ。あの時の気持ちは一言では表せない。

 そんな私を更なる不幸が襲う。なんと、私は婚約破棄の腹いせに聖女を襲った『悪女』として捕らえられてしまったのだ。
 もちろん身に覚えなんてない。でも、私の主張は受け入れられる事なく、4日後に処刑を待つ罪人の身になった。

「私が貴方なんて、冗談じゃない」

 婚約破棄から始まった悪夢のような出来事。穏便な婚約破棄を取らなかった事を責めた時、レナート王子は一連の出来事への関りを仄めかした。

 複雑な気分で倒れた私を見下ろす、小刻みに震える唇は寒さに少し色を失い始めている。その頬にそっと手を当てると、震えが一瞬止まる。

 ここに倒れているのは、間違いなく私だ。でも、この中には私はいない。中にいるのは私以外の誰か。
 消去法でいくなら一人の人物しかいないのだろう。

「貴方が私なのも、冗談じゃない」

 棄てられて陥れられた私と、棄てて陥れたレナート王子。これから、私達はどうなるのだろう?

 城に戻れば、処刑の日には私の体は死ぬ事になる。
 なら、死ぬのはどちらか? 元の体に戻った私か? それとも私の体に留まるレナートか?

 城にもどらない。一瞬頭を掠めた選択肢に首を振る。一国の王太子が関わって、逃げ続けられる訳がないだろう。

「レナートを助けるのは御免。レナートに助けられるなんて御免。でも、私が私を見棄てる訳にはいかない」

 倒れた私の背中と膝の間に手を差し入れる。ぐっと膝に力をこめると、わき腹が痛む。

「痛いけどーーー、今の私は男の子!」

 勢いよく立ち上がると、案外簡単に私の体は持ち上がった。
 私が私を持ち上げるなんて変な感じだけど、端から見ればレナートが私を抱き上げているだけでしかない。

「なんだか変なの……」

 ため息交じりにぼやくと、腕の中の私が暖を求めて胸に体を預ける。安らいだ顔に、何だか無性に泣きたくなる。

「貴方の為なんかじゃない! 全ては、私の為! 私……レナート王子である事を徹底的に利用してやるから!」

 誰かが聞いてくれている訳じゃないけど、大きな声で私はそう宣言する。
 くよくよと落ち込んだり、立ち止るのは嫌いだ。どんな時だって、楽しみながら出来る事を精一杯する。それが私の取り柄。
 
 遠くに見えるお城の灯りの方角に、私は一歩足を踏み出す。

 これから、私はレナート王子としてお城に戻る。そこで、私に着せられた汚名を晴らし、処刑を止めてみせる。
 レナート王子にはたくさん迷惑が掛かかる事になるだろうけど、それは婚約破棄の代償として我慢してもらうしかない。





2018年11月14日水曜日

前章終了時の人物紹介・地名・その他 ★ 貴方なんて冗談じゃありません! 婚約破棄から始まる入れ替わり物語



●リーリア・ディルーカ
 伯爵令嬢 夕闇色(紺青色)の瞳と髪 
 つんと澄ました美人だけど中身は、かなり野生児
 属性は炎
 
●レナート・セラフィン
 第一王子 リーリアの元婚約者  
 銀色かかった金髪に紫の瞳 『月と盾』の印
 属性は水
 
●デュリオ・セラフィン
 第二王子 赤味のある金髪に深い緑の瞳(深碧)
 属性は風 『剣と氷』の印

●クリス・ニアンテ
 薄紅の髪に碧眼 グリージャ皇国の大公
 見た目は幼く天使 中身はずっと年上で狡い大人

●グレイ・ローランド
 教会派が贔屓する芸術家 絵も描くし物語も書く。
 紫の瞳に金が混ざる 薄い若草の髪

●ナディル先生
 地方貴族の三男 マナ―を教えている
 金の髪に青い瞳 男だけど美人

●ジャン
 レナート王子の子供時代の従者
 第一従者に復帰。こげ茶の髪に明るい茶の瞳

●シスト
 レナートの従者 目付け役 目が細い

●シルヴィア・セラフィン(アベッリ公爵令嬢)
 薄い水色の髪に青紫の瞳

●ドゥランテ・アベッリ
 教会長。レナート王子の祖父

●ピエトロ・ストラーダ侯爵
 旧国派の枢機卿の一人。若草色の髪に金色の瞳。

●アレッシオ・グレゴーリ公爵
 騎士団長 信頼のおける人 
 稲穂の瞳に栗色の髪。

●ジョルジオ・グレゴーリ
 グレゴーリ公爵の次男

●ジュリア・グレゴーリ
 公爵令嬢。稲穂の瞳に栗色の髪。
 旧国派が嫌いだった。騎士になりたい。

●ラニエル子爵
 リーリアの父の友人 南の領リーヴァ出身
 旧国派の中心人物の一人 予算役

●ダルボラ伯爵
 騎士団 第二隊長 教会派

●ウィルソン伯爵
 礼院長 教会派

●エミリオ
 デュリオの従者 もの凄く明るい性格

●サント・プランク
 男爵の爵位をもつ 告白作戦の当事者

●パメラ・ボネーラ
 プランク男爵の恋するお相手

●コージモ・ボニート
 黒ずくめのズロースの人

●ブルーノ
 二隊小隊長 黒ずくめの一人

●イザッコ
 三隊騎士 黒ずくめの一人

●チェーリオ(一三世)・グリージャ 
 グリージャ皇王 現在弟の反乱で窮地にある

●リエト・ディルーカ
 リーリアの父 国王専属文官
 紺青の髪と瞳

●エドモンド・セラフィン 
 鮮やかな金色の髪に碧眼 現国王

●カミッラ・セラフィン(バルダート)
 デュリオの母
 オレンジ色の髪に深い緑の瞳




●セラフィン王国
 百五十年ほど昔に周辺国をまとめ上げて大国になった。
 先々代の宣言から旧国との融和が進みつつある

●アルトゥリア
 リーリアの故郷 魔術を使う忘れられた国

●バルダート領
 北にある正妃の故郷 隣国グリージャとの窓口でもある

●キュール
 グリージャの海賊を倒す拠点

●シャンゼラ
 ソフィアがいた教会の街 王都とバルダートの中間にある

●インテンソ河・タルヴォルタ川
 王都北に流れる川、決壊して国王たちを足止めしてしまう

●ヴィントの丘
 グレゴーリ公爵の愛人の住む場所

●ムルデ
 ヴィントの丘と王都の間よりやや北にある。
 騎士団の駐屯地がある バルダート迂回路の中継地でもある
 
●リーヴァ
 南にある貿易の街



二章突入前のまとめ

●リーリアは聖女でデュリオ王子の婚約者
●レナート王子はソフィアと婚約中
●アベッリ公爵・ストラーダ枢機卿 失脚中
●国王陛下・ディルーカ伯爵 バルダート遠征足止め中
●クリス レナート王子とのお茶会まち
●グレイ 逃亡の必要がなくなりのびのび
●ジュリア 謹慎中
●『教会派』人数は多いが、やや勢いがおちている
●『旧国派』勢いを増している


保留になっているあれやこれ

●入れ替わりはどんなタイミングで起こるのか
●入れ替わりの原因は何なのか
●レナート王子の卑しい贋物の意味はなにか
●『教会派』時間のない意味
●グリージャ皇王の要請は対応するのか
●宝剣と奇跡の関係
●ソフィアが聖女の理由
●魔術が禁忌になった訳

小さい謎とか伏線はかいておりません。
比較的わかりやすい謎だけかいてみました。



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